伝統工芸

先週、今週と続けて珍しく日本に伝わる工芸品がメインの展覧会に出かけた。

先週は、静嘉堂文庫美術館で開催中の「ハッピー龍イヤー」展で、龍の絵が描かれたお皿や掛け軸、織物などが展示されていた。確かに、龍の図柄は、中国伝来の物だけでなく、日本でも音が鳴り響く天井画など、よく目にする気がする。その中に、朱塗りの龍を彫り込んだ器があり、一緒に行った友だちが、お茶の先生にこういう彫物のある漆器の茶道具はとても高価だと聞いたことがあると教えてくれた。近づいて見ると、彫り物の陰影が複雑で、漆の層がとても厚く、たいそう時間と手間がかかっていることは想像出来た。が、見た目は、実家にあった鎌倉彫のお盆に似ていなくもなく、少し地味な印象だった。

そして、今週、最近、ちょくちょく訪れる泉屋博古館で、「うるしとともに ―くらしのなかの漆芸美」という漆器に絞った企画展を見た。そこに、静嘉堂に展示してあったものとよく似た龍の盆があり、漆を塗り重ねる堆朱や堆黒、堆黄という技法について、説明があった。凹凸をはっきり出すためには、それだけ層を厚くする必要があり、またより陰影を出すために朱色の間に黒や黄を挟んだりと、手間や時間もさることながら、大量に漆を必要とするので、材料費もかかるとあった。なるほど。そして、その展示の近くに、鎌倉彫が展示してあった!鎌倉彫は、これらの表現を手軽に出来ないかと、文字通り、鎌倉時代に日本で生み出されたものだったのだそう。あながち、私の感も間違ってはいなかったのを知って、ちょっと嬉しかった。

それにしても、割と身近にあるのに、鎌倉彫の歴史は知らなかった。これだから、美術館巡りはやめられない。

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静嘉堂文庫美術館のロビー展示と見事な堆朱の器
 
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泉屋博古館入口のポスター、上から3番目が似ている龍のお盆